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新不動産登記法Q&A No.15
境界確定訴訟と筆界特定制度の相違点 その1(境界確定訴訟の問題点)
Question
境界確定訴訟と筆界特定制度とは、どのような相違点がありますか?
Answer (平成17年11月6日現在の情報です)
境界確定訴訟と筆界特定制度の相違点は、次図の通りです。
境界確定訴訟の問題点 と 筆界特定制度での改良点とに分けて説明します。
当ページでは境界確定訴訟の問題点について説明します
現在の境界確定訴訟における問題点を列記します。
(1)時間・経済的コストかかる
境界確定訴訟は、以下の理由から、長期化することが多く、書証の提出、専門家の鑑定、現地での現況確認(検証)、現地の状況を知る関 係者の証人尋問が五月雨式になされることも多くありました。
- 専門的訴訟であること
- 請求棄却判決ができず、必ず確定しなければならないが、職権証拠調べが許されず、証拠が不足する場合が多いこと
- 和解をすることができないこと筆界の確定が迅速にできないと、国土調査法に基づく地籍調査作業や不動産登記法14条地図(旧不動産登記法17条地図)作製作業を実施する際にも支障が生じていました
また、境界確定訴訟は、鑑定費用、実地検証のための裁判官・書記官の出張経費などの訴訟費用、自らの主張する境界を明らかにした図面を土地家屋調査士に作製してもらう費用、弁護士費用など、経済的コストもかかります。
(2)裁判官が必ずしも判断権者として適さない
境界確定訴訟は、医療過誤訴訟や建築紛争と同様、専門性の高い紛争類型ですが、これまで手続についての立法上の手当てもなされておらず、また裁判官は必ずしも境界問題についての専門性を有しているとは限らないため、裁判官にとって負担が大きいといわれてきました。
境界確定訴訟は、所有権の範囲でなく、筆界(公法上の境界)を決定するものであり、登記行政と密接に関連するものです。本来、公法上の境界は分筆、合筆など登記官の処分により形成されて確定するものですから、公法上の境界に争いがある場合に、裁判所が決定するのは論理的に矛盾するとの批判もあり、裁判所よりもむしろ行政処分に適しているとさえいわれてきたのです。
(3)専門家の審理への関与が当然には保障されていない
境界確定訴訟においては、上記のとおり判断主体である裁判官が、筆界の確定についての専門的識見を有しているとは限りませんでした。鑑定の制度はありますが、審理に主体的・直接に関与するわけではなく、また事件に適切な鑑定人を探して引き受けてもらうことは困難であり、また引き受けてもらったとしても時間がかかって訴訟の遅延を招き、専門的知識の活用が不十分とされてきました。
(4)資料の不十分さ
境界確定訴訟は、当事者対立構造をとっており、当事者が必要な資料を収集し、これをもとに裁判所が判断する構造となっていました。
しかし、訴訟において有用な資料(地図など)を当事者が持ち合わせているとは限らず、当事者の訴訟追行能力や熱意が足りないことから、適切かつ十分な資料が提出されないことがありました。
また、職権証拠調べが原則として認められず、また登記所や市町村が保有している資料が訴訟に反映される制度となっていませんでした。
(5)当事者対立構造をとっているので隣人関係に悪影響を及ぼすおそれ
境界確定訴訟は、隣接当事者間で原告・被告となるという当事者対立構造をとっており、両者が法廷で対決することとなるため、隣人関係に悪影響を及ぼし、子孫まで遺恨を残す可能性があります。
このように、隣人同士の人格訴訟となるおそれがあることから、境界の争いがあっても訴訟まで起こすことをためらい、訴訟の利用数が少なく、解決に至らないおそれもありました。
(6)公示の不十分さ
境界確定訴訟の事実について、公示がなされていないので、不動産の売主が事実を隠して土地を売却し、買主が損害を被るおそれすらあり、取引の安全を阻害する一面がありました。
参考図書:『Q&Aでわかる「筆界特定制度」』著:鈴木仁史(日本法令)
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(新不動産登記法Q&A)
平成17年に改正された、新不動産登記法に関連したQ&Aです。